ホームルーターとはモバイル回線でインターネット通信をする
自宅据え置き型のルーター
ホームルーターとは、モバイル回線を使ってインターネット通信を可能にする自宅据え置き型のルーター(中継器)を指す言葉です。コンセントにさして通電させれば、Wi-Fiの電波が発生してインターネットができるようになります。
同じくモバイル回線を使ってインターネットを可能にするルーターとして、モバイルルーター(モバイルWi-Fi)をイメージされる方も多いでしょう。モバイルルーターは外出先でもWi-Fi通信が可能になる利点があります。対するホームルーターは、モバイルルーターよりも、アンテナの感度が強くて広範囲で安定した通信を可能にし、多くの機器を同時にできる点などに違いがあるのです。
ホームルーターの仕組み(モバイルルーターや固定回線との違い)
固定回線とホームルーターの違いも合わせてチェックしておきましょう。たとえば下記のような違いが挙げられます。
データSIMを使用してモバイル回線で通信
ホームルーターやモバイルルーターは、データ通信専用のSIMカード「データSIM」を使用しています。データSIMに入っている契約情報でユーザーを特定しながら通信を行う仕組みです。スマホと同じく、ホームルーターやモバイルルーターはモバイル回線を使って通信を行います。対する固定回線は、光回線や電話線を経由して通信を行う仕組みです。固定回線でも接続機器を使いますが、いずれもSIMカードをさすものはありません。
固定回線は回線工事を行い、ONUや固定回線ルーターが必要(工事費も発生)
固定回線を使用すると下記のような接続機器が必要になります。
ONU(Optical Network Unit)
- 光回線の終端装置。光信号とデジタル信号を相互に変換して通信を可能にします。
- ※アナログ信号をデジタル信号に相互変換するための機器はモデム(変復調装置)。
LANケーブル
- ONUやルーターを有線で接続するためのケーブルです。
モデム
- アナログ信号をデジタル信号に相互変換して通信を可能にします。
ホームゲートウェイ
- ひかり電話やWi-Fi電波の送受信ができる多機能ルーターを指す言葉です。
ルーター
- インターネット(正しくは「ワイドエリアネットワーク」[WAN:Wide Area Network])と家庭内の通信機器(正しくは「ローカルネットワーク」[LAN:Local Area Network])をつなげるための中継器。有線・無線を問わず、複数機器の同時接続を可能にする「HUB(ハブ)」の役割も果たす商品もあります。
- ひかり電話ルーター:ひかり回線による音声通話を可能にするためのルーター。
- 無線LANルーター(Wi-Fiルーター):Wi-Fiの電波を飛ばして、スマホやパソコンを無線で接続するためのルーターです。
これらは通信会社からレンタルできる場合もありますが、なかには自分で購入したり借りられても有料になったりする場合があります。さらに自宅に固定回線を引き入れるのには工事が必要です。工事には費用がかかるのも見落とせません。
ホームルーターやモバイルルーターは、上記のような接続機器や工事が不要です。もちろん発生しないので工事の費用を心配する必要もありません。
モバイルルーターはバッテリーを内蔵している(外出先や移動中で利用可)
ホームルーターとモバイルルーターの違いとして、バッテリーの有無が挙げられます。ホームルーターにはバッテリーが搭載されていないため、コンセントにささなければなりません。対するモバイルルーターにはバッテリーが搭載されています。電源を気にせず外出先や移動中もモバイルルーターなら利用可能です。
ホームルーターのメリットとデメリット
特徴のところでも軽く紹介しましたが、ホームルーターのメリットやデメリットをまとめておきましょう。ホームルーターを契約する前に、メリットもデメリットも理解するのが快適なネット環境を整えるためには重要です。
工事が不要
ホームルーターは契約・購入したあと、コンセントにさせばすぐにWi-Fiの電波が発生します。固定回線のときのような工事がいりません。固定回線を開通させるのに、費用がかかるのはもちろん、ひと月程度待たなければならない経験をした方も多いのではないでしょうか。ホームルーターなら費用も時間も節約できます。
設定が簡単
設定が簡単なのもホームルーターのメリットです。詳しい接続方法は機種やOSによって違いますが、スマホを接続するケースを考えてみましょう。Wi-Fiの設定画面から接続するネットワークを検出し、ホームルーターの本体に書かれているネットワーク名(SSID)が出てくるはずです。ネットワーク名を選択して、同じくホームルーターの本体に書かれている暗号化キーを入力したら接続ができるでしょう。固定回線のようなケーブルの接続も不要です。
モバイルルーターや固定回線より料金が割安な場合が多い
モバイルルーターや固定回線に比べてホームルーターは料金が割安に設定されている傾向があります。もちろんどの通信会社の機種や回線を使うかでも変わってくるでしょう。単純な額面の比較であれば、モバイルルーターの方が月額料金が安い場合もあるかもしれません。しかしホームルーターによっては、月間のデータ容量に制限がなく、モバイルルーターよりも多くの通信量が使える可能性を考慮しましょう。かりに“直近3日間で◯ギガまで”といった制限があったとしても月間が無制限であれば、ホームルーターの方が割安と捉えられるではないでしょうか。
または月々の利用料金が高くても、初期費用や機種代が節約できて結果的にお得に済む可能性もチェックするのがおススメです。固定回線の場合はとくに、接続機器の代金や工事費が発生する場合があります。住宅の賃貸契約が2年で更新になるのに合わせて、2年間使ったときの費用を合計して各社・各商品を比較すると考えやすいかもしれません。契約解除料が発生する場合は、期間・金額を確認して、合算して考えるようにしましょう。
引っ越しの際の手続きが簡単
コンセントにさすだけでホームルーターはWi-Fiの電波を発生させられます。そのため引越しをしたときも、手続きが簡単な点もメリットといえるでしょう。住所などの変更はネットからできるのが一般的です。もちろん引越し先でもコンセントにさせばすぐにWi-Fiを使えます。引越し先でも継続して使用すれば解約ではないため、固定回線のように契約解除料の心配もいりません。もちろん自宅内に引き入れた回線を回収する手間も不要です。
旅行や出張など宿泊先の施設で利用できる
旅行や出張などで宿泊先のホテルにあるWi-Fiが弱くて困った経験がないでしょうか。とくに長期滞在をする場合は、ホームルーターを契約してもいいかもしれません。工事不要ですぐに使え、滞在終了後の引き上げも容易です。下宿先で契約して、帰省時に持って帰って実家で利用する方法も便利でしょう。サイズがコンパクトで持ち運びやすい商品も増えてきました。
もちろん旅行や出張の後に、住所変更をして、自宅で引き続き使用してもかまいません。ただし解約するつもりであれば、契約解除料を念頭に置いた方がいいでしょう。契約更新月以外や契約期間未満での解約は契約解除料が発生する対象になるはずです。通信会社のホームページなどを確認して、契約解除料が安く抑えられるホームルーターを選ぶのがポイントになるでしょう。
設置場所の自由度が高い
モバイルルーターほどではありませんが、ホームルーターは設定する場所の自由度が高いといえます。固定回線の場合、回線のさし込み口の近くにONUやモデムを置くのが一般的です。ONUやモデムを回線のさし込み口から遠ざける、または遠くでWi-Fiを受信するためには、ケーブルを伸ばしたり中継器を用意したりする必要があるでしょう。
しかしホームルーターならコンセントにさし替えれば移動も簡単です。シンプルなデザインのものが多く配線も少ないため、自宅のインテリアの邪魔にもなりにくいでしょう。
同時に接続できる台数が多い
自宅で使うホームルーターは、家族数名が同時に接続して使う場合も多いのではないでしょうか。さらにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の発展によって、あらゆる家電製品を便利に使うためにネットに繋げる時代になりました。モバイルルーターよりもホームルーターは同時接続台数が多いのも魅力です。通信がモバイルルーターより安定しているのも安心につながるでしょう。
固定回線の方が通信は安定している
続いてデメリットをチェックしましょう。ホームルーターはモバイルルーターよりは通信品質がいいですが、固定回線よりは劣るといわれます。同じWi-Fiに接続する形であっても、固定回線は自宅内に有線のケーブルを直接引き込んで使うため電波が安定するのです。しかしホームルーターはあくまで飛んでいる電波をキャッチする仕組みのため、固定回線ほど安定した電波の供給は難しいといえます。
持ち運び(移動中)時に利用ができない
ホームルーターにはバッテリーが搭載されていません。そのためコンセントのない車の場合は移動しながら持ち運んで使うことは難しいです。さらにモバイルルーターと比べて機種のサイズが大きく重い点にも注意しましょう。
速度制限がかかる場合がある
スマホと同じように、モバイル回線で通信を行うホームルーターは速度制限にかかる可能性があります。通信会社によって差があり、直近数日間での上限が設定されているケースや周囲でのネットワーク利用が集中してネットワークへの負荷が大きくなると制限がかかるケースなど様々です。自宅で仕事をする方はもちろん、動画やゲームのようなデータ量の大きいコンテンツを楽しみたい方は注意しましょう。
置き場所を見極める必要がある(電波の入りやすさ)
飛んでいる電波をキャッチする仕組みのため、ホームルーターは置き場所を考える必要があります。たとえば下記のような条件で置き場所を考えてみましょう。また鉄筋コンクリートの分厚い壁で覆われているなど建物の構造によっても電波状況が変わります。もし条件に合致しない場合はホームルーターよりも固定回線の方が良いかもしれません。
- 窓際や外からの見通しが良い場所がおススメ
- 障害になるものが周囲にない
- 水回り・金属の近くや電波を出す家電のそばには置かない
- 床から1~2m程度の高い場所が良い